新製品の発案やマーケティングキャンペーンは、上手く実行すれば、利益に繋げることができる。しかしながら、ビジネスリーダーたるもの、プランを思いつきさえすればいいというものではない。組織のリーダーは、思いついたプランが魔法のように開花することを期待しながら、椅子にふんぞりかえっていれば良いわけではない。
行動計画(アジェンダ)の売り込み
多くのビジネスリーダーが犯す過ちは、叱咤激励さえすればプランは首尾よく実行されると考えてしまうことである。洞察力のあるリーダーであれば、キャンペーンやプロジェクトの成功を望むなら、まず初めに組織内の関係者に発案を売り込み、その後に顧客や投資家に説明することが必要なことを認識しているはずだ。また、その発案を具体的な利益に繋げるには、効果的に意思伝達を行い、プラン実行のあらゆる段階を上手く管理できるかどうかは、自身の能力にかかっていることを理解しているものだ。
あなたは、どうだろうか? そして、どうすれば良いのだろうか?
まずリーダーは、組織内における自身の役割を認識し、どのように役割を果たしていくべきなのか理解し、組織内のスタッフを説得して行動計画への支持やコミットメントを取り付けるために利用できるツールが何であるかを知ることが必要である。また、自身の強み・弱みを認識し、組織内や重要な関係者の間でどのように自分が見られているのか理解することも大切である。さらに、リーダーたるもの、マーケティングキャンペーンを実行・推進する前に成功と失敗の可能性を調べ、キャンペーンの実行・推進を決めた場合には否定的な予期せぬ展開を最小限にとどめるために、進捗状況を常に監視、評価、そしてチェックし、キャンペーンがどのような状態にあるのか把握しなければならない。
経営のあり方を変える
同様に重要な点として、リーダーには、変化・変革を受容できる組織の能力を見極めることが求められる。特に、以前に何が機能して、何が機能しなかったのかを把握することが必要である。また、リーダーは、企業文化を評価し、変革を許容する社風なのか否か見極めなければならない。もし、そのような社風ではない場合には、企業文化を変える必要がある。加えて、誰が支持者、抵抗者そして変革推進者になり得るのか、そして各々の役割を理解、評価することが重要となる。 新たな発案を実施・実行に向けて検討する際、組織内の関連部署が担う役割それぞれに異なる。組織内の部署へのインパクトを分析することにより、成功の見込みの見極めが可能となる。機運をつかむ
発案は、実際に実行されるまでは、殆ど何の意味も持たない。機運をつかみ、組織内の関係者、納入業者、投資家、顧客そして直接的・間接的に影響を受けることになるその他関係者から支持を引き出すことが目標となる。その際、変化・変革を通じて達成しようとしている事柄を他者に伝え、それを聞いた他者が変化・変革を支持したいと思うようなメッセージを作成することが第一歩となる。
また、発案を具体的な利益に繋げる上で、リーダーにとって重要なもう一つのポイントは、既存そして将来の顧客の行動計画への支持を確かなものにすることである。行動計画の内容が注目を集めてメディアに取り上げられるほど、組織が進めようとしている変化・変革について見聞きする顧客は多くなるが、ここで重要なことは、組織内で顧客と直接接する者が誰なのかをはっきり見極め、その者が行動計画の内容を完全に理解し支持していることを確認することである。「一度、行動計画を説明したのだから、彼らは理解し支持しているはず」と考えてはいけない。それでは、失敗することになる。顧客サービス担当者が、「足元で起きている変化について、実際のところ何がどうなっているのかわかりません」などと顧客に答えたとしたら、どうなるであろう。顧客との関係に悪影響を及ぼすのは必至だ。場合によっては、既存そして将来の顧客を失うことに繋がりかねない。
リーダーは、生産性や採算性の向上そして職場環境の改善など、行動計画が個々の部署にもたらすメリットについて喧伝することを忘れてはならない。世界の有名なシェフが言うように、作った料理が平均並みとみなされるか高く評価されるかは、全てプレゼンテーションにかかっているのだ。
同じことは、発案や行動計画にも当てはまる。優れたメッセージは、行動計画の達成目標と、組織が達成したいと望んでいる目標を明瞭かつ端的に伝える。そして、そうしたメッセージは、適切に事を進め、望ましい変化・変革を実現する上で必要な支持やチームワークを呼び起こすことになる。メッセージを必要以上に複雑な内容にしようものなら、リーダーは聴衆だけでなく、行動計画を具体的な利益へ変えるために不可欠な支持をも失うことになりかねない。メッセージがシンプルかつ明瞭でなく、複雑である場合、メッセージを聞いた各人は行動計画の達成目標について自分流に解釈してしまう恐れがある。これは、行動計画の実現には障害となる。
ストーリーテリングを活用
ストーリーは、わかりやすく、またその他の行動計画のマーケティングメッセージと直接関連した内容である必要がある。ストーリーテリングは、そのキャラクターやストーリー自体に人々が共感しやすい場合、信頼を得る上で非常に効果的な手段になり得る。 ストーリーが、貴社が過去に経験し成果を達成した出来事に触れながら、行動計画の達成目標に関連していれば、深くそして長期に亘るコミットメントが期待できよう。 適切に活用すれば、ストーリーテリングは行動計画のマーケティング力を長期に亘り持続させることが可能で、コミットメントや感情的関与を引き出す上で有用である。また、ストーリーテリングは、貴社のスタッフを、成果を達成するためになすべき事柄を理解した信奉者に変えることが可能である。 さて、その次のステップとして、リーダーには、行動計画の理解・実行のために、各部署において講じる必要がある措置を明白に把握することが求められる。
ストーリーテリングは、組織を動員し、必要な措置を講じて不可欠なコミットメントを引き出す上で役に立つ、効果的なマーケティングツールである。
他者の行動計画を克服
部門長やライン管理者から必要なコミットメントや支持を引き出そうとする組織のリーダーにとって障害となり得るのは、部門長やライン管理者個々人の行動計画である。リーダーは、自らが進める行動計画の目標や目的を、部署長やライン管理者がどのように解釈し部下に伝えているのか、注意を払わなければならない。望ましい成果を達成するにあたり、行動計画の目標・目的の解釈とその伝え方は、全ての者が同じ認識、考え方になることが重要である。
組織全体として、同じ方向に目を向け、成果を挙げるためになすべきことに取り組んでいなければならない。 組織の成功にとって重要でありながら、時折見落されがちなのが、新たな行動計画を効果的に実行するためのマーケティングキャンペーンの策定である。行動計画が、組織全体そして既存や将来の顧客に受け入れられるには、多大な時間と努力が必要で、行動計画の各実行段階の綿密なプランニングそしてメッセージの伝達に費やす時間は、行動計画を具体的な利益に繋げることができる組織の能力自体に直接的な影響を及すのだ。
MWorld Fall, 2008, By DAVID GOLDSMITH----AMA抄訳
※著者略歴:David Goldsmith キーコープ社、PIMCO社、UBSグローバル・アセット・マネジメント社においてセールス担当バイス・プレジデントを歴任。ウィスコンシン大学(リバーフォールズ校)にて修士号(専攻:カウンセリング)を、またコーネル大学にてビジネス・リーダーシップに関するマスターズ・サーティフィケートを取得。発案を利益に繋げることを望む企業への助言を専門とするコンサルティング会社DS Goldsmithの創設者(詳細については、ウェブサイトideas@dsglodsmith.com参照)。
※M World は、米国AMAが四半期毎に発行する機関誌です。
※M World の記事内容・コンセプトは、必ずしもAMAが提供する研修プログラムの内容とは一致しません。