記事概要
激動の時代。
たとえ逆境にあっても優れた成果を上げるチームのリーダーは、以下を実行すべきである。それは、
1. 相手を信じる
2. 結果に対して責任を持たせる
3. 支援する環境を提供する-支持的フィードバックを提供する
1. 相手を信じる
リーダーは、メンバーが自信を持てるような"期待"を抱き(=相手を信じる)、現実の状況をありのままに認め、未来はもっと良くなるという信念を生み出すべきである。
2. 結果に対して責任を持たせる
特に変化と不確実性の時代には、短いサイクルでの目標設定をし、モチベーションを高めるべきだ。
四半期90台、といった目標ではなく、7日ごとに新しいターゲットに迎えてスタートを切られるように工夫することで
モチベーションの低下期間を短くすることができる。
3. 支援する環境(支持的フィードバック)を提供する
調査結果によれば、肯定的フィードバックよりも否定的フィードバックを与える人のほうが多い。
否定的フィードバック3件に対して肯定が1件が一般的である。しかし激動の時代には、肯定と否定の比率を5:1に
近づける必要がある。業績低下に注目してそれを是正しようとするよりも物事の前向きな進展に注目するほうが、
実はもっと迅速に社員の取組み意欲を高め、問題を解決していくものだ。
MWorld Winter 2008-09, By Dr. Thomas K. Connellan----AMA抄訳
リックは、「厳しい市場で抜群の成績を上げている」営業チームを率いるセールス・マネージャーである。
おそらく、今、この文章をお読みになっている皆さんは、セールス・マネージャーであるか、販売担当のバイスプレジデントだろう。それとも、プラント・マネージャー、CFO、マーケティング担当ディレクター、技術部長、あるいは経営陣のひとりだろうか。ひょっとすると、人事(HR)のVPとして、支援を求めるリーダーの指南役を務めておられるかもしれない。 あなたの肩書が何であろうと、またあなたが率いるチームがどのような職務を遂行していようと、あなたは今、リックが使用したのと同じ3つの秘訣を使用して、順境でも逆境でもチームのモチベーションを高く維持することができる。そう、あなたも厳しい市場の中で抜群の成果を上げることができるのだ。
成果を生み出す3つの秘訣
私が過去20年間にわたって実施してきたリサーチは、宇宙飛行士、CEO、オックスフォード大学のローズ奨学生、世界的な女性指導者、製造技師、成績優秀な学生、トップクラスの営業担当者、軍隊の首脳、米国大統領などを広く対象としてきた。そこで私が見出したことは、いかなる状況にあっても優れた成果を上げる高成績チームのリーダーは、次の3つのスキル領域におけるチーム・メンバーの扱いが低成績チームのリーダーとは一貫して異なっている、という事実だった。自分のチームから高い成果を引き出したいのならば、あなたも、リックのような人々が実行してきた次の3つのことを同じように実行する必要があるのだ。
1. 相手を信じる
2. 結果に対して責任を持たせる
3.支援する環境を提供する
たとえば、セールス・マネージャーを対象とした私のリサーチによれば、成績が優秀な営業担当者の上司にあたるマネージャーは、この3つのスキルを行使する能力の評価で、部下の成績が低いマネージャーより22%高いスコアを記録している。 皆さんがこの3つのスキルをある程度まで使用していることは私も知っているが、目標とする業績レベルを一貫して達成するような方法で3つのスキルすべてを使用しているリーダーは、順調な時期にあってさえも非常に少ない。通常時によく見られるのは、過大な責任と過小な支援、というパターンである。もっとも、ときにはその逆であることが望ましい場合もあるのだが。 激動の時代には、このアンバランスがさらに顕著なものとなる。リーダーは、部下にますます重い責任を課し、ますます支援の提供を減らそうとするのだ。当然ながら、それでは業績は向上せずに低下してしまう。 では、どうすればいいのだろうか。それは、この3つのファクターすべてに全力を傾注することである。景気の下降に直面したある企業は、これを実行して、売上を6か月間で目標額の80%から目標額の133%へと増大させた。また、別の企業では、その後12か月で7桁の額(数百万ドル規模)の追加売上を計上した。さらにもう1社は、60日未満で品質の不具合を3分の2に減らした。
物事を改善の軌道に乗せる
では次に、皆さんの会社を同じような改善の軌道に乗せるために使用できる3つのスキルセットについて具体的に説明しよう。
1. 部下を信じる ― 現実をありのままに認め、向上を信じる
期待は強力な効果を生み出す。ある程度までは、単に「そうなるだろう」という期待を作り出すだけで、実際に何かを生じさせることさえ可能である。セールス・チームのメンバーの心の中に、「自分は競争の激しい市場の中でもうまくやっていく能力がある」という信念を生み出せば、メンバーはますます熱心に要領よく働くようになり、売上の数字にその自信が反映されるようになる。
自信は伝染する。同様に、ペシミズム(悲観)も伝染する。「今は不況だから売上は落ちるに決まっている」という考えが心の中に忍び込むのを許してしまうと、それがやはり売上の数字に反映する。ただし、自信が良い結果をもたらすのとは逆方向だ。
キャドバリー・シュウェップス社を世界ナンバー1の菓子メーカーにすることを最終目標としているトッド・スティッツァー氏は、建設的な方法でスタッフの能力を限界以上に引き出すことができるかどうかが目標達成の鍵になることを熟知している。若干不可能と思えるようなタスクをスタッフに求めることにより、トッド・スティッツァー氏は適度な不安感を醸成し、スタッフに共通の問題意識を共有させ、目標達成に向けて事に当たらす。
トッド・スティッツァー氏は次のように語る:「決して、人の善意につけ込むのではない。これまで以上に大きな、そしてより良い組織になるために互いに協力し合える者から成る、目的意識の高いチームを構成することである」。まさに、成長とは、そういうものだ。
さて、ここで大半のリーダーが道を誤ってしまう。「チームを信じる」ことを希望的観測と混同してしまうのだ。当てのないオプティミズム(楽観)を振り回しても、問題は解決できない。単に改善を願うだけではいけないのである。物事が改善へと向かっていくような方法で行動しなければならないのだ。ポジティブな期待は、現実に立脚しているときには、成果を向上させることが可能であり、また事実そうなるだろう。つまり、改善を生み出すのは、現在の状況に関する認識と、状況を好転させるために実行できる方策の意義に対する固い信念なのだ。
現実の状況をありのままに認めることが何よりも重要である。そうあって欲しいという願望を現状認識に先行させてはならない。もし売上が減少したのなら、その事実を認める。マージンの縮小に直面しているのならば、「マージンがきつい」とチームに伝えるべきである。業界が低迷しているのなら、それをまず事実として受け入れるべきだ。
チームを信じることは、現実を拒否することとは違う。チームを信じるとは、(通常は、現状に対する冷厳な評価によって)現実を受け入れ、それから、「物事を再び軌道に乗せていこう」と語ることによって、新たな現実を生み出していくことである。
「何もかも順調だ。今後6か月もこのまま頑張ろう」と言うのではなく、今の現実を正しく認識する必要があるのだ。たとえば、「この件では12%の予算超過だ」、「市場情勢は厳しい」、「サイクルタイムが計画よりも2.5日長くなっている」、「売掛金が目標レベルを18%上回っている」といった言葉は、どれも目の前の現実を正しく評価しようとしている。
「人々の積極性を維持するためには......平常の時期には肯定と否定の比率を3:1に、激動の時期には5:1に近づける必要があるのだ」
さらに、次のような言葉によって、新しい現実を生み出していく必要がある。「しかし、我々は強力なチームを築き上げたのだから、この一時的な苦境も克服できるだろう」、「だから、これからの3日間で、この四半期末までにスケジュールの遅れを取り戻す方法を考え出そうじゃないか」、あるいは、「今、この部屋に集まっている全員が力を合わせれば、今後30日間以内に目標額まで売上を回復させることは可能だ」などである。
最後に、すべてを要約して、従いやすいひとつのモデルに要約すれば次のようになるだろう。「たしかに今はうまくいっていないが、また調子を取り戻す力を皆が持っていることを私は知っている」。つまり、まず物事を現状のまま受け入れ、それから未来の現実はもっと良くなるという信念を生み出していく、というのがこのモデルである。
また、このモデルは、前向きな期待を「ポジティブ・シンキング」(積極的思考)と混同されるべきではない。ポジティブ・シンキングは、「物事を楽天的に考えて、現実を受け入れない」という思考回路に陥りやすい。激動する市場に対するこうした見当違いの対応こそ、現実否定の最もありがちな形の1つであり、そんなことをしても自分自身を愚かに見せるばかりだろう。いくらあなたが「そんなことはない」と言っても、それが事実であることを皆が知っている。誰もあなたのオプティミズムを賞賛などしない。「この人は気が変になったのではないか」と思うだけである。
まず、現状の掌握にとどまり、それ以上の余計なものを付け加えないことである。
2. 目標設定サイクルを短縮することによって、チーム・メンバーに結果に対する責任を担わせる
ほとんどの企業は、年間目標を設定し、それを月次目標や四半期目標へとブレークダウンしている。しかし、変化と不確実性の時代にあっては、もっと短いサイクルの方がモチベーションを高めることができる。なぜなら、そうした時代には、目標までの期間が短いほど、達成する成果が大きくなるからだ。
企業や事業部が年間目標を設定することには妥当な理由が多々存在するが、現在の私たちはそれとは別の課題に直面している。それは、今日のような激動する市場の中で、求められる業績を毎日の仕事としてどのように達成していくのかを考えることである。そうするための最適な方法は、目標設定プロセスを短縮することである。なぜなら、目標設定プロセスが業務の自然な流れに密着しているほど、責任感と積極性が高まるからである。
毎日のように変化する競争の激しい経済環境の中で、長期的な目標(たとえば、四半期目標や年間目標)だけを掲げている場合、その目標が、現実に即した、社員の意欲を引き出すものであり続けることは難しい。なぜなら、そうした目標は自然な仕事の流れに合致しないからである。
たとえば、ボブの目標が、次の四半期に90台の製品を販売することであるとしよう。もし、最初の1か月に21台しか売れず、2か月目の半ばでさらに10台売れただけであった場合、Bobは、3か月の目標が達成困難であることを直ちに見て取るだろう。いったんそうなると、Bobは、もう同じレベルの責任感を持ち続けることができなくなり、四半期の後半の6週間はモチベーションが低下してしまう。しかし、もっと短い時間枠(たとえば、週次目標)が設定されていれば、7日ごとに新しいターゲットに向かって新たなスタートを切ることが可能になる。もし、水曜日になって、その週の目標が達成できそうもない場合でも、モチベーションの低下は残りの2日間しか生じない。そして、月曜日になれば、新たな意欲をもってやり直すことができる。
激動の時代には、毎週の目標、さらには毎日の目標に集中することによって、積極的な取り組み姿勢と成果達成能力が高まることが判明している。2~3の事例では、時間単位の目標でさえも一定の効果が見られた。
3. 肯定と否定の比率を変えることで、支持的なフィードバックを提供していく
我々の調査によると、ほとんどの人が、ポジティブ(肯定的)なフィードバックより、ネガティブ(否定的)なフィードバックを与えることが多い。概して、否定的なフィードバックを3件与えるごとに肯定的なフィードバックを1件与えている、というのが一般的な比率である。将来の見通しが利かない時代には、否定と肯定の比率はさらに大きくなり、4~5の否定に対して肯定が1件しかない、という比率になることが多い。人々の積極性を維持するためには、この比率を完全に逆転させる必要がある。つまり、平常の時期には肯定と否定の比率を3:1に、激動の時期には5:1に近づける必要があるのだ。
自分ではこの比率がいい線を行っていると思っている人でも、実際に調べて確認してみるとよいだろう。つまり、1週間の間、自分自身のフィードバック・パターンを監視し、フィードバックを提供するあらゆる機会に、肯定か否定かを記録するのだ。3×5インチのカードの片面に、肯定フィードバック1件あたり1つの「プラス」印を付け、もう1つの面に、否定フィードバック1件あたり1つの「マイナス」印を付ける。あなたが私の知っている他のリーダーとかけ離れた人間でない限り、あなたは自分が否定フィードバック3~4件ごとに肯定フィードバックを1件しか伝えていないことに気づいて驚くだろう。
実際にそのような結果になった場合は、この比率の数字を毎週1ずつ変えていく、という週間目標を自分に課してみるとよい。あなたの肯定と否定の比率が1:3であれば(これが典型的な比率である)、第1週目には、この比率を1:2にするという目標を立てる。そして、次の週には1:1、それからその翌週には肯定と否定を2:1に逆転させる、といった形で、肯定と否定の比率を5対1まで到達させる。この段階に達したとき、あなたは激動の時代に相応しい比率に至ったことになるのだ。
この比率を変える近道は、業績の上昇に注目することだ。ほとんどの人は、本能的に、「例外による管理」を実行しており、業績低下に注目して、欠点、ミス、さまざまな失敗などを監視しようとする。そして、そうした問題をすかさず暴いて追求し、それを徹底的に是正することで事態を収拾しようと試みることが多い。しかし、実は、物事の前向きな進展の方に注目することで、もっと迅速に従業員の取り組み意欲を高め、問題を速やかに解決していくことができるのだ。
誰かが業績の向上に貢献したら、その具体的な行動を賞賛することで、その人に報奨を与えるとよい。これは、モチベーションを高めるとともに、その人がそうした行動をさらに増やすように奨励することになる。前向きな行動に対して具体的に報奨を与えると、その全体的な効果として、あなたの会社に全体的な上昇傾向が生じる。たとえ、競合企業がまだ下降線をたどっている時期にあっても、そうなのである。
今すぐに取り掛かる
さあ、これでお分かりだろう。以上がすでに多くの事例で実績が証明された3つのツールであり、これは皆さんにとっても役に立つツールなのである。複雑でもなく、難しくもない。この記事を読み終わって、すぐにでも実行できることである。しかも、実際に効果があるのだから、皆さんがその1つを選んで使い始めるまでに長い時間はかからないだろうと、私は期待している。
トム・コネランは、ニューヨーク・タイムズのベストセラー執筆者であり、FedEx、Neiman Marcus、Marriottといった組織で頻繁にビジネス関係の講演を行っている。ミシガン大学ビジネススクールのプログラム・ディレクターも歴任。コネランのパフォーマンスチームは、350人の認定コーチとトレーナーのグローバルなネットワークから成り立っているので、事業をグローバルに展開するあらゆる組織に貢献することができる。詳細については、www.tomconnellan.comまたはwww.salesmanagerbootcamp.comをご覧ください。
※M World は、米国AMAが四半期毎に発行する機関誌です。
※M World の記事内容・コンセプトは、必ずしもAMAが提供する研修プログラムの内容とは一致しません。