この危機を乗り切るか、流されるか?

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記事概要

この危機を乗り切るか、流されるか?
「パーフェクトストーム(最悪の事態)が世界中を吹き荒れている。
こうした脅威を予測し、備える企業はこの危機を逆手にとって、競合企業に差をつける躍進の絶好期へと転じることができる。

人材はほとんどの組織にとって限られた資源であり、それは今日も将来も同じだろう。
大規模な企業は時に大きな打撃を受ける可能性がある。
なぜなら団塊ジュニア世代の労働力が、大企業を避けるようになっているからだ。

優位に立つか、溺れるか、対策を講じる緊急性を十分に理解できていない企業が多い。
ダートマウスのエイモス・タック経営大学院教授が実施した経営破たん事例の調査研究によれば、多くの経営者が自分の業界で何か望ましくない変化を引き起こす事態が進展していることを認識していながら、それに関して対策を講じることができていないという。

波を捉える企業は優れた人材を呼び込み、意欲を引き出し、組織に定着させる取り組みを戦略的に展開する重要性を認識しており、それを推進するリーダーも有能な人材の中から選んでいる。多くの場合、タレントマネジメントとエンゲージメント推進活動を戦略的プランニングプロセスの中に組み込んでいる。
その様な企業の創造的な取り組みとして、

1.社員が自分の会社を誇りに思えるようにする
2.社員が自分は大切にされていると感じるようにする
3.社員に十分な情報を与え、関わりある問題に発言権を与え「会社の一員である」と感じられるようにする

 

これらの領域はいずれも社員がどのように「感じる」かを問題にしているものだ。
これが社員に意欲を与え、会社に定着させるのは情緒的な要因だからだ。

1.の会社に対する誇りを感じさせるような有意義なコーポレートアイデンティティは、もっとも優れた人材を惹きつけ、定着させることに役立つ。
社員に訴える企業バリューを見せることもひとつの手段である。

2.の社員に「自分は大切にされている」と感じさせるための取り組みとして、管理職が配下の人員にコーチングが提供できるようにトレーニングを提供することも1つである。
また、オフィスのデザインやアメニティも社員がどのくらい自分が大切にされているか感じる要因である。

人生の中で困難な時期にいる社員に手を差し伸べることも社員を大切にする会社の姿勢を実証する効果的な手段であり、カウンセラーを紹介するプログラムがそのひとつだ。

3.の社員に帰属意識を持たせることとして、常に的確な情報を与えること、重要な懸案については本人の意見やアイディアを配慮して真剣に取り組む企業も増えている。この取り組みは尊重されたい、どこかに帰属していたいという人間の欲求を満たすからだ。

このように、人材を惹きつけ、意欲を起こさせ、会社に定着させる取り組みは多様な方法で開拓できる。
これが最悪の事態に波に溺れるのでなく、波間から上にあがるきっかけになると言えよう。

 

MWorld Winter 2008-09, By Dr. Michael Lee Stallard----AMA抄訳

あなたの会社は「パーフェクト・ストーム(最悪の事態)」を乗り切れるか

 

「パーフェクト・ストーム」が世界中を吹き荒れている。この最悪な状況をもたらす嵐は、今後数十年間にわたって多くの企業の存続を危うくするだろう。さまざまな市場の力が前線帯の暴風のようにぶつかり合って、非常に不安定な状態を生み出している。
こうした脅威を予測してそれに備える企業は、この危機を逆手にとって、競合企業に差をつける躍進の絶好機へと転じることができる。

実際、洞察力のある企業は、すでに競争優位の獲得に向けて行動を開始しており、それを示す事例も数多く存在するのだ。そのような企業は、大波にのまれるのではなく、上手にその波に乗って、競合企業を置き去りにしようとしている。
このパーフェクト・ストームの全貌を把握するためには、グローバリゼーション、テクノロジー、人口統計、そして変化する文化的価値といった諸力の相互作用を理解しなければならない。そのような個々の力の影響については、すでに多くのことが書かれてきた。疑いなく、市場の開放によって、ますます多くの企業がグローバルな競争に参加するようになった。新しい機器やテクノロジーが広く利用可能になったことが、競争の新たな担い手に、世界に通用するコスト基準と品質基準を満たす能力をもたらした。また、新製品開発とプロセス革新のペースも加速している。 そのような新たな参入者が全世界から出現する中で、競争の水準は絶え間なく上昇し続けている。


人材は、ほとんどの組織にとって限られた資源であり、それは今日も近い将来も同じだろう。
特に、特別なスキルや才能の持ち主は、組織の間で奪い合いとになっている。テクノロジー、保険、そして石油・ガスといった分野の専門家は、常に供給不足の状態にある。

このような有能な人材の逼迫は、ベビーブーマー(団塊の世代)が定年を迎えるこの数年から数十年のうちに、さらに深刻化するだろう。 大規模な企業は、特に大きな打撃を受ける可能性がある。なぜなら、団塊ジュニア世代、つまり、1982~1994年に生まれた「ミレニアル」とも呼ばれる世代の労働力が、大企業という職場を避けるようになっているからだ。
こうした世代は、比較的小規模な企業に勤めたり、自分自身で起業する道を選ぼうとしている。団塊ジュニアの世代は、自分の親を見て、多くの大企業という職場が社員の命を吸い取る場所であることを知ってしまったのだ。

GallupやCorporate Leadership Council、およびその他の機関が過去10年間に実施した調査研究によると、米国の労働者の75%近くが自分の仕事に積極的に取り組んでおらず、そのうち約20%が、一種の報復行為として、ときには組織の利益に反する行動をとっていることが分かっている。マスコミなどにも、職場を風刺した人気番組や連載アニメがある。たとえば、「ザ・オフィス」(テレビ)、「オフィス・スペース(邦題: リストラ・マン)」(映画)、「ディルバート」(ビジネス・コミック)などだ。

 

優位に立つか? それとも溺れるか?

会社の中に「気象予報士」がいて、その人が世の中の動きを監視して、必要なときに「進路変更を行うべし」と勧告してくれればいいのに、とは誰しも思うことだろう。
しかし、実際は、対策を講じる緊急性を十分に理解できていない企業が多い。

人間という生き物は、いざ変化が必要だという事態になっても、日頃の行動をなかなか変えようとしないものである。
神経科学が教えるところによれば、神経の接続は行動様式を変えるときに形成されるが、新しい神経接続を形成するには、相当な量のエネルギー消費を必要とするらしい。
最も抵抗が少ない経路を選択する方が容易であるから、人間は過去の習慣と同じことを実行し続けようとする。そのような行動が通用しないことに気づいていてもそうなのである。

この見方を裏付けるものとして、ダートマウスのエイモス・タック経営学大学院のSidney Finkelstein教授が実施した経営破綻事例の調査研究がある。その調査結果によれば、多くの経営者が自分の業界で何か望ましくない変化を引き起こす事態が進展していることを認識していながら、それに関して対策を講じることができていなかったというのだ。

波を捉える企業

波に上手に乗る機会を捉えようと積極的に行動している企業も存在する。
そのような企業は、最も優れた人材を呼び込み、その意欲を引き出し、組織に定着させる取り組みを戦略的に展開する重要性を認識しており、そのような取り組みを推進するリーダーを最も有能な人材の中から選んでいる。そ
して、社員のエンゲージメント(仕事への取り組み意欲や貢献度)を測定するとともに、多くの場合は、タレント・マネジメントと社員エンゲージメント推進活動を戦略的プランニング・プロセスの中に組み込んでいるのだ。

そのような企業の創造的な取り組みから学ぶことは多い。それは以下の3つのカテゴリーに分類できる。
すなわち、

(1) 社員が自分の会社を誇りに思えるようにする
(2) 社員が自分は大切にされていると感じるようにする
(3) 社員に常に十分な情報を与え、本人に関わりがある問題に対して発言権を与えることで社員が「会社の一員である」と感じられるようにするという3つ

である。
なお、この3つの領域はいずれも社員がどのように「感じる」かを問題にしており、情緒的な性質のものである。
これまでの経験や調査から得た教訓として、たしかに報酬や対価といった合理的な要因は社員を満足させはするが、社員に意欲を与え、会社に定着させるのは情緒的な要因なのである。

1. 会社に対する誇り

1990年代の初めに、ギャラップ・ポール(Gallupの世論調査)から判明したのは、米国人の個人的なアイデンティティは、家族や地域社会よりも、会社と仕事の方により密接に関係している、という事実であり、現にそういった傾向にあった。

現代の人々は、自分が勤めている会社や役職から得られる社会的な地位に対する期待感の方が強い。
従業員が仕事の方により大きな意義を見出そうとしていることも、この調査は示唆している。
従業員に誇りを感じさせるような有意義なコーポレート・アイデンティティ(従来からの言い方では、雇用主のブランド)は最も優れた人材を引き付け、定着させることに役立つ、という事実に気づく企業が増えている。

たとえば、バイオテクノロジー企業のGenentechは、社名の下に「In business for life」というスローガンを付記している。
こうして、Genentechはミッションを目に見える形で掲げているわけだ。
また、同社は、社員によるがん患者の訪問を行っており、画期的な製品の開発に成功すると、それを祝う全社規模のパーティを催している。

社員に訴える企業バリューを見せることも、社員に誇りを感じさせるひとつの手段である。
マクドナルド(McDonald's Corporation)のCEO、Jim Skinnerは、かつて創業者のRay Krocが確立した価値観を正式に伝えていく目的で2007年に発足した企業規模プロジェクトのリーダーであった。
そこでは、管理職を対象としたワークショップが実施され、映画のシーンの映像を含むさまざまな教材を使用して、創業時の価値観を生き生きと伝え、社員の心に訴えようとした。
現在、これは、この価値観を日常業務の中で実践している社員の姿を描いたストーリーを記録するという形で、継続的な取り組みとなっている。
マクドナルドは、現在も、その企業バリューとそれを忠実に守り続ける方法を伝えていく、企業規模での対話を効果的に継続している。
これは、社員がマクドナルド・ファミリーの一員であることを誇りに思う気持ちに繋がっている。
のようなバリューに基づいた企画、たとえば、より健康的な品目をメニューに加えたり、難病の子どもとその家族のためのロナルド・マクドナルド・ハウスに支援し続けたりすることが、マクドナルドの社員の誇りの源泉となっている。

2. 社員を大切にする

社員に「自分は大切にされている」と感じさせるための取り組みも強化されている。

管理職が配下の人員にコーチングを提供できるように、管理職にトレーニングを提供することも、そのような活動の1つである。
そこで管理職は、部下が自分の強みを自覚できるよう援助する方法を学習するのである。
研修を受けた管理職は、社員との対話により多くの時間を費やすようになり、それを通じて、社員が何を望んでいるかを察知し、社員が自分の関心を組織の利益と一致させるキャリアパスを見出せるように支援していく。

ゴールドマン・サックスなどは、メンター・プログラムを導入して、社員の学習と成長を補完している。

Avonプロダクツ社のタレント・マネジメント担当バイスプレジデントで、能力管理に関する業界団体であるThe New Talent Management Networkの代表も務めているMarc Effronは、Avon上層部に所属する数千の管理職から成る人材プールを統括している。
Effronは、このグループを、Avonがその成長目標を満たすために意図的かつ継続的に開発し続けなければならないタレント・パイプラインの中に位置するものと考えており、Effronとそのチームは、このグループの業績を追跡し、いよくてきハードルの高い任務を割り当てているほか、各人の学習と成長を助けるためのピア(同僚による)コーチングや行動に関するコーチングも提供している。
オフィスのデザインやアメニティ(快適さをもたらす設備など)は、社員がどのくらい自分が大切にされているのかを感じる要因となる。

シカゴにあるGoogleのエンジニアリング・オフィス(最近、シカゴで最も優れた職場であると評価された事業所)の責任者であるBrian Fitzpatrickは、「私の目標は、職場を魅力ある場所にして、社員が自宅で働くよりも職場に居たいと思わせることだ」、と語っている(社員は、自宅で働くことも選択できる)。
Fitzpatrickのオフィスに設けられたアメニティとしては、無料のグルメ料理や毎週オフィスに通ってくるマッサージ師などがある。

人生の中で誰もが直面する困難な時期に社員に手を差し伸べることも、社員を大切にする会社の姿勢を実証する非常に効果的な方法の1つである。
そのような取り組みとしては、カウンセラーを紹介する従業員支援プログラム、信教の自由を推進する「faith-friendly」プログラム(聖職者の紹介を含む)、さらには、Beryl Companiesの「Beryl Cares」のような支援プログラムなどの例がある。Berylは、このニーズへの対応に非常に力を入れており、「自分は大切にされている」という社員の気持ちを強める継続的な機会を探求している。
最近では、交通費の高騰を埋め合わせる一助として、賃金の低い社員に50ドル分のガソリン・カードを支給した。

3. 社員に「帰属意識」を持たせる

常に社員に的確な情報を与えること、そして社員にとって重要な懸案については本人の意見やアイデアを配慮して真剣に取り組む企業が増えている。
この種の取り組みは、尊重されたい、どこかに帰属していたい、という人間の欲求を満たすのに役立つ。

Lowesの従業員関係担当ディレクター、Fred Stokesによると、Lowesは各店舗に「ご意見番チーム」(Voice Team)を設けて、最前線で働く社員が自分の意見とアイデアを意思決定者に伝えることができるようにした。
また、世界最大の防衛企業であるLockheed Martinの一部のリーダーは、社員の意見を聴取することを目的とした「開始-中止-継続」(Start-Stop-Continue)というミーティングを導入した。
そこでは、自分たちの事業部門が今は実施していない行動の中で、何を新たに実行し始めるべきか、現在実施している行動の中で、何を中止すべきであるか、そして、どのような行動を引き続き実行し続けるべきか、について話し合うというものである。

また、社員ブログ、ウィキ、社員プロフィール・ページなどのソーシャル・メディア技術を拡充、活用している企業もある。そのような場所で、個人の写真や興味を紹介し、社員に的確な情報を与え、発言権の機会を設け、各自の人物像を表現する手段を提供している。

BlockCentralの前編集者、Kristina Patrickによれば、H&R Block社は、企業ニュースサイトのBlockCentralのデザインを一新し、社員が社内ニュースの記事にコメントを追加したり、質問を提示したりできるようにした。

また、Sabre Holdingsは、地理的に分散した社員を結び付ける手段として、「SabreTown」というブランドを冠したソーシャル・メディア・プラットフォームを開発した(Sabre Holdingsの社内広報担当シニア・バイスプレジデント、Al Comeaux)。SabreTownは、わずか3か月で、Sabreの全世界9,000人の社員の65%によって導入された。

 

こそ行動の時


上記のさまざまな例が示すとおり、最も優れた人材を引き付け、社員に意欲を起こさせ、会社に定着させるような職場の開発は、多様な方法で開始することができる。実際の取り組みは、必要としている社員のタイプや、そのような社員が最も高く評価する行動のタイプなど、各社固有の状況に合わせて調整すべきである。賢い企業は、最悪の事態の波に溺れるのではなく、波間から上に上がり、最適な取り組みを今すぐに開始するだろう。

マイケル・リー・スタラード(Michael Lee Stallard)は、E Pluribus Partnersの社長で共同創立者であり、Fired Up or Burned Out(「燃え上がるか、燃え尽きるか」)の筆頭執筆者である。

※M World は、米国AMAが四半期毎に発行する機関誌です。
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