生き"延びる"から生き「伸びる」へ ~ビジネスに弾みをつける方法

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記事概要

・厳しい経済環境の時期は、自組織の目的と価値について再度、考えるべきだ。
・組織が現在投じている資金を、その組織目標への貢献度と対比して、重要性が高い項目を優先すべきである。
・苦しい時期には誰もが重要なこととそうでないことを区別し、重要なことだに集中するようになり、こうしたことから考えられないような革新が生み出されることがある。たとえばアップル社は、極度の苦境に陥った1997年以来、数種の品目だけに限定して開発を展開し、iMac、iPod、iPhoneを生んだ。
・会社の成功は、経済状況を読み取ることにあるのではなく、社員が"価値ある何かを顧客に対して生み出したい"といかに思い続けられるかどうかにかかっている。
・人は感情に左右されやすい。今の時期こそ仕事の結果に対して感情的に反応せず、以下の7つの質問を自身に投げかけてほしい。そうすることで感情的ではなく、論理的に頭を整理できるようになる。
1. 過去6か月間に組織として達成しようとしていたビジネス成果の上位3件は何だったか?
2. その3つの領域で、実際に達成されたことは何だったか?
3. 私は、組織がその3つの成果を達成するのを支援しようとして個人的に何を実行したか?
4. 自分が実行して実際に効果があったことは何か? なぜ、それは効果を生み出したか?
5. 自分が実行して効果がなかったことは何か? なぜ、それは効果を生み出さなかったのか?
6. 過去6か月間を振り返ってみて、私が学んだ(あるいは、改めて気づいた)教訓は何だったか?
7. 過去6か月間に対する反省を踏まえ、今後6か月間、私が過去と同じように実行することは何か?また、業績や結果を向上させるために今までと異なる方法で実行しようと思うことは何か?

MWorld Spring 2009 By Dan Coughlin----AMA抄訳

厳しい時期にキャッシュフローが不足したとき、最初のステップとしてコスト削減を実行するのは間違っている。コスト削減は第2のステップなのだ。第1のステップは、初心に返って、なぜこのビジネスが存在しているのかを再確認することである。

組織内のトップの8~10人程度を集めて、次のように問うてみて欲しい。

「私たちの組織の目的は何か? 私たちの組織が提供しようと努めている価値、しかも人々が進んで対価を支払おうとする価値は何なのか?」

数時間を割いて、こうしたテーマについて討論してみて欲しい。組織目的が明文化されていない場合は、適当な時間を費やして、討論を通じてそれを明確化するべきである。 結果的に、組織目的が当初の想定と違うものであることが分かっても、それはそれで構わない。 まず、自分たちの組織がなぜ存在するのかを理解し、その上で初めて財務上の意思決定に着手できるものなのだ。

あなたの組織が現在資金を投じている支出項目をひとつひとつ徹底的に洗い出し、その重要度を組織目標への貢献度という点からランク付けしてみてほしい。そして、今後12か月間の事業の財源として使用できる金額を算定する。現時点でどうしても資金を割り当てる余裕のない投資は、潔くあきらめて、最も重要な項目のために資金を温存するべきである。場合によっては、現在の支出先よりも重要性が高い項目を追加する必要が生じることもあるかもしれない。重要なのは、最終的にその支出枠の中に残す項目すべてが、組織目的に貢献し得る影響力を持っていなければならない、ということである。

不況時のビジネスメリット

苦しい時期には大きなメリットが1つある。それは、誰もが、重要なこととそうでないことを区別し、重要なことだけに集中するようになる点である。
この集中から、通常は考えられないような革新が生み出されることがある。そのような革新的な製品やサービスを生み出す最初のステップは、多くの良いアイデアを否定し、少数の偉大なアイデアを認めるようにすることである。

Fortune誌とのインタビュー(2008年3月17日号)で、アップルのCEO、スティーブ ジョブス氏は次のように語っている。
「何かに "フォーカス"(集中)するとは、特定の対象に対して全力を傾注して"イエス" と言うことだと考える人が多い。だが、フォーカスとはのような意味ではない。フォーカスとは、目の前にある他の100個の良いアイデアに対して "ノー" と言うことなのだ。
選択は慎重に行う必要がある。だからこそ、私は当社が成し遂げたことを誇りに思うが、それに劣らず、"成し遂げなかった" 多くのことも誇りに思うのだ」。

極度の苦境に陥った1997年以来、アップル社は、同時に開発するのは数種の品目だけに限定したマニアックな"フォーカス"を行ってきた。そうして生み出された成果がiMac、iPod、iPhoneである。これこそ、まさに革新的な成果と呼ぶべきものだろう。

キャッシュフローが非常に乏しいときは、数多くの選択肢の中から1~2個の項目を選択せざるを得なくなるが、それは実は望ましいことなのである。本当はキャッシュフローが潤沢なときにもそれが望ましいのであるだが、どういうわけか経営者というものは資金が許す限り多くのアイデアを試そうとする傾向がある。少数のことを最適な形で実行することに注力する方が、よほど効果的なのだけれど・・・。

経済動向という「日常」にどう対処するか

経済動向とは何か?

読者の皆さんの多くは、おそらく私よりも専門的な定義をお持ちであると思うが、ここでは私の定義を示そう。

「経済動向とはたくさんの "点" の集合である」。

ある特定の1日に限定して、全世界のすべての企業の経済業績を集め、それを平均化して1つの「点」で表せば、経済動向の始点が得られる。
それから数週間、数か月、そして数年にわたって毎日それを実行すれば、大量の点の集合が得られるだろう。そこで、その点の流れを最も適切に表すような近似曲線を描くことができ「我々は景気後退に差し掛かっている」、「今は不況だ」などと宣言することも可能かもしれない。そして、そうした宣告のいずれかを理由にして、革新的な手法を顧客に提供する投資さえも中止できるというわけだ。

だが、そういうやり方は止めたほうがいい。
企業としての長期的な成功を左右するのは、経済状況を読める如何ではなく、顧客や見込み客にとって価値ある何かを生み出したいと考えるあなたとあなたの会社の意欲の強さなのである。

結果の心理学

予想を超えた成果を上げたとき、人々がどれだけ高揚した気分を示すかに気づいたことがあるだろうか?

そうしたことが連続して2回起こったときの盛り上がりなどは大変なものである。さらに、続けて3回ともなれば、見境のないほど楽観的な気分になり、その良い時期がいつまでも終わらないとまで考えるようになる。

1999年のドットコム企業の熱狂ぶりや、2004年の住宅ブームを思い起こしてみればよい。 逆に、結果が予想を下回ってしまったとき、人々がどれだけ落胆しているか、気づいているだろうか? 同じことが連続して2回起これば、それは大変な意気消沈ぶりとなる。さらに、続けて3回ともなれば、底なしの悲観に陥り、悪い時期がいつまでも続いて永遠に好転しないとまで考えるようになる。2000年のドットコム・バブルの崩壊、そして、2008年の住宅市場の壊滅を考えてみればよい。 この感情の浮沈のジェットコースターが、非常に多くの貴重な時間、エネルギー、資金を浪費するのだ。


達すべき水準を引き上げる

MW24.gif仕事の結果に対して感情的に反応せず、論理的に向かい合うようにお勧めしたい。ここで、過去6か月間のあなたの仕事に関する以下の7つの質問に、それぞれ2分ずつかけて答えてみてほしい。

1. 過去6か月間に組織として達成しようとしていたビジネス成果の上位3件は何だったか?

2. その3つの領域で、実際に達成されたことは何だったか?

3. 私は、組織がその3つの成果を達成するのを支援しようとして個人的に何を実行したか?

4. 自分が実行して実際に効果があったことは何か? なぜ、それは効果を生み出したか?

5. 自分が実行して効果がなかったことは何か? なぜ、それは効果を生み出さなかったのか?

6. 過去6か月間を振り返ってみて、私が学んだ(あるいは、改めて気づいた)教訓は何だったか?

7. 過去6か月間に対する反省を踏まえ、今後6か月間、私が過去と同じように実行することは何か?
  また、業績や結果を向上させるために今までと異なる方法で実行しようと思うことは何か?

ここで、先に読み進めるのを少し待ってほしい。今度は、14分間を費やして、上の同じ7つの質問に答えてみてほしいのだ。そうすると、仕事の成果に対して感情的に反応するのではなく、将来に向けてどのように成果を上げるべきか、論理的に考えている自分自身に気がつくのではないだろうか。

典型的な例

マークは、成果主義のエグゼクティブだった。
私がそれを知った理由は、単に、マークに初めて会ったとき、彼自身が「ダン、私は成果主義のエグゼクティブなんだ」と言ったからだ。

私はこう答えた。「それは結構だね。なぜって、エグゼクティブの役割は、成果を持続可能な方法で向上させるような意思決定を行うことだからね」。
だが、マークはそれから45分の間に、さらに4回も「私は成果主義のエグゼクティブだ」という言葉を口にした。 そこで私は訊ねた。

「ねえマーク。その成果主義のエグゼクティブというのはどういう意味なんだい?」
マークは答えた。

「四半期が始まるたびに、我々は目標を設定する。四半期の終わりに、その目標を達成したかそれを超えていれば、パーティを開いて皆で祝う。だが、目標を達成しなかったら、私は部下を厳しく叱りつけるんだ。ときには、目標を達成することの重要性を骨身にしみて解らせるために、一時解雇してしまうことだってあるよ」。

私: 「マーク、そんなやり方をして、ずいぶんもったいないことをしてるんじゃないか?」

マーク: 「何を言ってるんだ? このやり方でもったいないことなど、何もないよ。結果なんてものは上がったり下がったりするさ。だが、それはこの業界のどこでも同じだろう」。

私: 「だがね、君の部下は、成果についてあれこれ心配することで膨大な時間とエネルギーを無駄にしているんだ。そんな暇があったら、実際に成果の向上に努めた方がいいだろうに。」

マーク: 「たしかに、部下たちは、私の下で働いていると気が休まるときがないと言ってるね。でもまあ、それが仕事ってものだろう」。

私: 「ところでマーク、君はまだ最初の2つの質問にしか答えていないよ。成果について、答える質問がまだ5つ残っているよ」。

マーク: 「え? いったい何の話だ? 5つの質問って何のことだ?」

私は、上記の後ろの5つの質問を繰り返した。 マークは私を見てこう言った。

「ダン、私はひっきりなしにバックミラーを見ながら運転するみたいなビジネスのやり方は嫌いなんだ」。

私: 「私だって、年がら年中バックミラーを覗いていろと言っている訳じゃないさ。だがね、ちょっと一息入れて、これまでに起こったことを振り返らないと何度も何度も同じやり方を繰り返すだけになってしまうだろう。君の部下は感情のジェットコースターに振り回されることになるよ」。


その後の3年間、マークは、依然として成功を祝うパーティを開き、目標を満たさなかった部下には厳しい罰を与え続けた。
しかし、変わったのは、30日ごとにトップの8人のマネジャーを集め、一緒に1時間を費やして7つの質問全部に対するそれぞれの回答について話し合うようにしたことだった。
その3年間、絶えず業績が上下する業界の中で、マークの組織の主なビジネス成果は着実に向上していった。



Dan Coughlinは、中規模の組織や大規模な企業内の中規模事業部と協力して、組織のビジネス・モメンタム(事業推進力)の向上を図っている。Dan Coughlinは、ACCELERATE: 20 Practical Lessons to Boost Business Momentum(Kaplan Publishing、2007年)の著者である。詳細については、www.thecoughlincompany.comをご覧いただきたい。 現在の経済情勢の中でビジネスを前進させる方法の詳細については、AMAのセミナー、"Strategy Planning"(www.amanet.org/2526)、"Strategy Execution: Getting It Done" (www.amanet.org/2209)、および"Fundamentals of Strategic Planning"(www.amanet.org/2565)の案内をご覧いただきたい。

※M World は、米国AMAが四半期毎に発行する機関誌です。
※M World の記事内容・コンセプトは、必ずしもAMAが提供する研修プログラムの内容とは一致しません。