生き"延びる"から生き"伸びる"ための妥協なきリーダーシップ

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記事概要

企業や組織を率いることは、複雑なジグゾー・パズルのピースをはめていくことに似ている。ところが現在の経済情勢は、今まで慣れてきたビジネスのパズルをご破算にして、細かく複雑なピースに切り分けてしまい、裏表もひっくり返ってしまった。ただでさえ複雑なパズル・ゲームをますます困難にし、多くの人に深刻な不安をもたらしている。この解決方法は、「妥協なきリーダーシップ」だ。

あなたの中の妥協なきリーダーはこの難局に対処できるのだろうか?「妥協しない」ことは、リーダーシップの施行と行動における二者択一を迫る。妥協するか、しないか。今すぐやり遂げるか、先延ばしするか。問題の解決を図るか、悪化を増大を許すか、etc.。
妥協なきリーダーシップをより的確に理解するための10カ条の要件リストは以下の通りである。

1. 明確さ:会社をどこに導こうとしているのか絶対的な明確さを維持すること
2. 価値観:価値観を求めるのでならば、それを身をもって示すこと
3. 責任:やる必要があるのなら、それをやり遂げること
4. 透明性:妥協したときは言い訳をせず、結果に対する責任を引き受けること
5. 文化:内部から破壊しないこと
6. 変化:独裁的にも杓子定規にもならないこと
7. 集中:「オフィスワーク症候群」を避けること
8. 戦略的:自分の仕事の適量を管理すること
9. 意思堅固:粘り強く、勇敢であること
10. 士気の向上:情熱を持って先導すること

妥協なきリーダーシップのDNAにはより高いレベルの思考と行動様式が織り込まれている。
妥協なきリーダーは融通の利かない厳格な存在ではなく、思いやりがあり、柔軟なのである。最高の成果を目指し、最高の能力を発揮させ、ゲームを制することに対するゆるぎない目的意識を持っている。一貫性、誠実さ、信頼を通じて、尊敬を獲得する。困難に動じず、ダイナミックな文化を作り出す。確固とした粘り強さと勇敢さを身につけている。
もっとも重要なのは、妥協なきリーダーに率いられた健全な企業は、こうした厳しい不況期を生き抜いていくだろう。

MWorld Spring 2009 By Neil Ducoff----AMA抄訳

企業や組織を率いることは、複雑なジグソー・パズルのピースをはめていくことに似ている。粘り強く取り組んで、どのピースがうまくかみ合うかを何度も試しながら、そうした微かな手がかりを見つけ出していけば、やがてパズルを完成させることができる。

いったん、このパズル解きの内的な作業に慣れてしまえば、何度も試みるたびに、ますます短時間でピースを組み上げることが可能になる。ところが、現在の経済情勢は、今まで慣れてきたビジネスのパズルをご破算にして、はるかに細かく複雑なピースに切り分けてしまい、しかも、裏表を全部ひっくり返してしまった。今は、絵を合わせる手がかりさえ見つけられない状況だ。 今回の不況は、ただでさえ複雑なパズル・ゲームをますます困難にし、それが多くの人に深刻な不安をもたらしている。しかし、解決方法はある。それは「妥協なきリーダーシップ」だ。

妥協なきリーダーシップ: やる必要があるのなら、何としてでもそれをやり遂げる

現在のような不況期には、あなたのリーダーシップの「本気度」が試される。問題は、「あなたの中の妥協なきリーダーはこの難局に対処できるか?」である。
「妥協しない」ことは、リーダーシップの思考と行動における二者択一を迫る。まず何より、妥協するか、妥協しないか。今すぐやり遂げるか、先延ばしするか。問題の解決を図るか、問題の悪化と増大を許すか。事態を掌握して主導権を握るか、「囚われの身」になることに甘んじるか。粘り強く、果敢に闘うか、脅威に怯えながら暮らすか。達成の感動を味わうか、時間とチャンスを取り逃がす不安を抱え込むか。

妥協なきリーダーシップとは何かをより的確に理解するために、以下に10か条から成る要件リストを示す。各要件は、番号順に、要求能力に対するハードルが少しずつ高くなっている。全体として、この10か条は、あなたがリーダーとして会社がこの困難な時代を生き抜けるように導いていくための思考と行動の基盤を提供するものだ。

1. 明確さ: 会社をどこに導こうとしているか絶対的な明確さを維持する

会社をどこに導いていくかを紛れもない明確さで示す能力は、妥協なきリーダーが持つ、他のリーダーと違う資質である。リーダーが自分の目標と行動指針を絶対的な明確さで示すことにより、社員の知る会社のビジョンとミッションはより明確になる。
絶対的な明確さはビジネスのGPS(全地球測位システム)のようなものである。これは、目的地とそこに到達する経路を明らかにしてくれる。 絶対的な明確さによって、企業が進路を外れて横道に逸れることや、拙速な事業拡大や未知の市場への参入といったビジョンと整合しない意思決定を行うことを防ぐことができる。もちろん、意思決定や方向性の変更があっても、ビジョンとミッションから逸れることはない。

2. 価値観: その価値観を求めるのならば、それを身をもって示すこと

たとえばあなたがある企業のことを、妥協のない高品質、徹底した顧客サービス、期日を必ず守る、ということで高く評価しているとしよう。実際にあなたが評価しているものは、その企業の価値観によって生み出され、支えられている文化である。ある価値観に基づいた緻密な行動がそのようなレベルで実践されている場合、それは自然発生した行動ではない。これは意図をもって計画され、細心の注意を払って実践されるものなのである。そしてなにより重要なのは、これがトップの行動が発端となっているということだ。

企業の価値観にみだりに手を加えることは、自然の力に干渉することと似ている。企業内のどこかで価値観をないがしろにする行動をしたり、価値観に微細な変更を加えたりすると、それは「バタフライ効果」と呼ばれる現象を引き起こし、それがなければ避けられたはずの問題、不具合、そして劇的な事件が大波となって襲ってくることがある。
以下に、企業の価値観を堕落させる妥協的な行動の一般的な例を示そう。


1.
会社から物を盗む、または会社の金を着服する
2.
場あたり的に勝手なルールを作る
3.
約束を守らない、または明らかな嘘をつく
4. 他人の権限を本人の知らないところで覆す
5. 「私の言うとおりにしろ、だが私のやり方を見習うな」といった矛盾した指示を出す

3. 責任: やる必要があるのなら、やり遂げること

責任を引き受けず、やるべきことを実行しないということは、ビジネス・リーダーに相応しくない妥協の最たるものである。そうした態度は、企業文化の根幹そのものを毀損する。なぜなら、妥協に傾きがちなリーダーの性癖が、会社全体の行動規範を形成するからである。
難しい意思決定や行動を先延ばしする、あるいはあっさりと避けてしまうことは、妥協を助長する行動様式である。この第3の要件を実践することは、妥協なきリーダーの絶対に譲れない必須条件である。リーダーとは、物事を成し遂げようとするその強固な意志、粘り強さ、そして勇気によって明らかになるものなのだ。


4. 透明性: 万一、妥協したときは言い訳をせず、結果に対する責任を持つ

言い訳は、妥協的な行為を正当化して言い逃れる安易な手法である。
真の妥協なきリーダーは、そうした凡百の輩の域を越えて、率直に事実を認め、自分の妥協に対する責任を取る。そして、その結果を自分で引き受ける。 「失敗した。あの決定はまずかった。私が間違っていた」。妥協の非を認めることは透明性を生み出し、そこからリーダーの人間味が透けて見えてくる。
人間は誰でも間違いを犯すものだと納得され、そのリーダーには隠された意図や下心がないことが理解される。
間違いを認めることは混乱した状況とそれに伴う緊張を終結させる。つまり、巨大な排気弁を作動させる(不要なもの排出する)ことに似ている。そして何より、信頼を築く。


5. 文化: 内部から破壊しない

会社の中で起きている現実にリーダーが正面から向き合おうとしないといったネガティブな行動様式は、会社の文化を徐々に汚染していく。さらに悪いのは、リーダーが問題を認識しながら行動を起こさないことである。
事業がどんなに成功していようと、あなたが自社の文化をどんなに賞賛していようと、同じことである。文化とは壊れやすいものなのだ。リーダーとして会社の文化を守ること、しかも万難を排して是が非でも守ることこそ、あなたの責務である。


6. 変化: 独裁的にも杓子定規にもならない

妥協なきリーダーになるということは、威圧的な「暗黒の使者」となって問答無用で絶対服従を要求する、ということではない。もし、あなたが、妥協なきリーダーシップというスタイルに対して「それではあまりにも独裁的で杓子定規になってしまうのでは」という第一印象を受け躊躇するのであれば、次のように考えてみて欲しい。

誠実さ、信頼、思いやり、倫理観、粘り強さ、そして勇気が融合するとき、そのすべてが一体となって、妥協なきリーダーシップの枠組みを形作るのだ、と。もし、この枠組みが柔軟な適応力を欠いていたとしたら、それはビジネスの激しい動きと猛スピードの変化に揺さぶられて、バラバラに崩壊してしまうだろう。
万物は変化する。ある決まった行動様式が、今日はうまくいっても、明日もそうだとは限らない。妥協なきリーダーは、変化がどれほど急速に到来しても、変化を虚心に受け入れて積極的に利用していく態勢を整えておかなければならない。


7. 集中: 「オフィスワーク症候群」を避ける

「オフィスワーク症候群」は、焦点を見失ったリーダーに生じる症状である。
これは、リーダーがオフィスの日常業務の細目に埋没して身動きが取れなくなり、目下の現実や会社の業績との接触を失ってしまった状態である。 「私はオフィスの事務作業に埋もれたりしていないから、オフィスワーク症候群とは無縁だ」と思うかもしれない。
だが、もう一度、よく考えて欲しい。
日常業務にかまけてビジネスの動きと力関係に少しでも疎遠になっているなら、それはすでに仕事漬け症候群に罹っているのだ。
オフィスワーク症候群の最適な防止法は、ビジネスに対する切迫感を絶えず維持し続けることである。コミュニケーション、情報フロー、そして制度的な責任体制を損なうような妥協は絶対に避けなければならない。


8. 戦略的: 自分の仕事の適量を管理する

あなたの仕事ぶりを示すリーダーシップ・スタイルを一言で表現するとしたら、それは何だろうか? 超人的に仕事をこなす「スーパーヒーロー」だろうか? もしくは、山積みの仕事とプロジェクトを次々とこなすことに快感を覚えるタイプだろうか?
そういうあなたは、毎日のスケジュールがぎっしり詰まりすぎて、人との会話や個々の業務に十分な注意を払うことが難しくなっていないだろうか?
スーパーヒーローの実態とは、荷物を積みすぎたモーターボートのようなものである。過積載のモーターボートが一気に加速して飛ぶように水上を滑走することなど、不可能だ。やたらと走り回っても、その航跡に見事な大波を残していくだけで、あとには何も残らない。なにせ、騒がしく水を蹴立てて進んでいくだけで精一杯なのだから。
そして、その大波が皆の大きな迷惑なのだ。そのせいで、周囲の人たちは、スーパーヒーローが通り過ぎるたびに大波をやり過ごすことを強いられるのだから。


9. 意思堅固: 粘り強く、勇敢であれ

現在の景気動向から何かの影響を感じ取っているならば、その対策を講じることが可能だ。ただし、それが可能なのは、あなたが「妥協しない」という信念を持ち、何らかの独創的な発想によって自信をもって会社を統率している場合だけだ。今は、ただ小さくなって嵐に耐えているべきときではない。旧弊を打破し、状況に適応し、成長を遂げるときなのだ。


10. 士気の向上: 情熱を持って先導する

情熱は、あなたが実行するすべてに対する使命感を高め、健全な意気込みを増幅させる。その影響力は非常に大きいため、他の人々も同じ情熱を感じ取ることができる。
妥協なきリーダーの情熱は、最もポジティブな形で他者を惹きつけ、周囲の者に働きかける。すると、この共有化された情熱は、会社全体の業績を高めていく。

過去の偉大な企業を考えてみるといい。常軌を逸するほどの情熱が、その組織の、そしてそのリーダーの業績を生み出す原動力として働いていることに気づくだろう。


以上の10か条によって分かるように、妥協なきリーダーシップのDNAには、より高いレベルの思考と行動様式が織り込まれている。
妥協なきリーダーは、融通の利かない厳格な存在ではない。思いやりがあり、柔軟なのである。そして、最高の成果を目指し、最高の能力を発揮させ、ゲームを制することに対する揺るぎない目的意識を持っている。そのようなリーダーは、一貫性、誠実さ、信頼を通じて、尊敬を獲得する。困難に動じない、ダイナミックな文化を作り出す。確固とした粘り強さと勇敢さを身に付けている。

妥協なきリーダーは、物事を最後までやり遂げる。自分自身からも、自分が率いる人々からも、最高のものだけを期待し、要求するからである。さらに重要なのは、妥協なきリーダーに率いられた健全な企業は、こうした厳しい不況期を生き抜いていくだろう、ということである。


Neil Ducoffは、No-Compromise Leadership(DC Press、2008年)の著者であり、StrategiesのCEOである。Strategiesは、コネティカット州に拠点を置くトレーニング&コーチング企業であり、「妥協なき~」というスローガンを実践する方法について、リーダーと組織を教育している。詳細については、電子メールをneil@nocompromiseleadership.com宛に送付するか、www.nocompromiseleadership.comをご覧いただきたい。 不況期にリーダーシップと経営・管理のスキルを高める方法に関心をお持ちの方は、AMAのセミナー、「Developing Executive Leadership」(www.amanet.org/2501)および「Successfully Managing People」(www.amanet.org/2295)に是非ご参加ください。

※M World は、米国AMAが四半期毎に発行する機関誌です。
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