イノベーションをリードする、4つの危険な通説

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記事概要

あなたはイノベーションを弾圧 する上司になっていないだろうか?

多くの大胆なアイディアが上司によって冷酷に握りつぶされたり、骨抜きにされたりしている。アイディアを片っ端から葬り去り、芽を出すチャンスを与えない上司もいるにもかかわらず、意外にもそのような事態がどのように生じるかにほとんど注意が払われてこなかった。そこで、アイディアを出す社員の管理をめぐり、4つの通説をここで明らかにしたい。


通説1-クリエイティビティ(創造性)は楽しいものである。
通説2-「"すべてのアイデアは良いものだ" - "良いアイディア"なのであればそれは分かりきったことだ
通説3-イノベーションとは企業家精神である
通説4-クリエイティビティ(創造性)はすべてに優先する



Paddy Miller、Thomas Wedell-Wedellsborg----AMA抄訳

イノベーションをリードする立場でありながら高い不成功率を見逃しているマネジャーは、非常にリスクの高い賭けをしているようなものだ。

しかも、結果が悪かったとき、その非難の矛先はいつもマネジャーに向けられる。「現状維持に汲々としている。」、「新しいイノベーション志向の管理慣行に心を閉ざしている」といったように。
だが、こういうものの見方は間違っている。部下の間でイノベーションをどのように推進すべきか、マネジャーが常に知っているとは限らないからだ。それにもかかわらず、多くのマネジャーは、どうすればイノベーションを獲得できるかを部下に一生懸命アドバイスしようとするのだが、そのアドバイスが問題の一因なのだ。なぜなら、「創造的」な上司が口にする決まり文句の多くが、実は大失敗に直結する間違った処方箋だからだ。

これを理解するには、マネジャーたちがどのようにイノベーションのあり方を伝授し、どのように部下から提案されたアイデアに反応しているかを問い直してみるとよいだろう。

あなたはイノベーションを弾圧する上司になっていないだろうか?

多くの人々は、大胆な新しいアイデアが上司によって冷酷に握りつぶされたり、原形をとどめないほど骨抜きにされたりした経験があるだろう。そのような上司は、アイデアを片っ端から葬り去り、芽を出すチャンスさえ与えない。意外なことに、そのような事態がどのように生じるのかには、ほとんど注意が払われてこなかった。そこで私たちは、アイデアを持つ人々の管理をめぐる4つの危険な通説を明らかにした。これは、実際にそれに基づいて行動し始めると深刻なトラブルを招く、イノベーションに関する企業スローガンとしてよく知られたものである。

通説1 ― 「クリエイティビティ(創造性)は楽しいものである」

おそらく、クリエイティビティ(創造性)について最もよく知られた通説は、「何よりもまず楽しいものであるべきだ」というものである。そのため、マネジャーがイノベーション・セミナーを企画するとき、「楽しめる」ことがセミナーの内容を決定するときの主要な条件のひとつとなる。そして、「イノベーションは日常業務の中の心地よい息抜きであるべきだ」という方向に思考は展開していく。

しかし、真実は違う。イノベーションとは「物事の進め方を変革する」ということを別の言葉で言い換えたものにすぎない。また、イノベーションを成し遂げることは可能だが、それが大きな楽しみであることは稀である。それどころか、真のクリエイティビティは、次のような苦い要素をいくつか伴うのが常であり、しかもそれは公然と行われる。

- 既存の体制、組織、プロセスの批判
-個人のマネジメント能力に対する疑義の提示
-イノベーションの過去の取り組みとそれが失敗した原因に言及する厳しいやり取り

多くのマネジャーは、自分の物事の進め方が問われ、不愉快となる会話を避けようとして、トラブルメーカーを脇役に追いやるために全力を挙げ、そのような人物が厄介な問題提起を行うと、楽しみに水を差す無粋な人間というレッテルを貼る。そして、あくまでもブレーンストーミングやカラフルなポストイット貼りに固執し続けるのだが、それは面白い経験の種になるだけで、結局は会社ぐるみの遊びに終わる。クリエイティビティの追求は適切に実行すれば貫徹可能だが、そのためには、そのプロセスの大部分は格別楽しいとは言い難い、という事実を受け入れる必要がある。楽しむことも結構だが、それが厳しい話し合いの妨げになってはならない。

通説2 ― 「"すべてのアイデアは良いものだ" - "良いアイディア"なのであればそれは分かりきったことだ」

悪いアイデアというものは存在しない、と言いたくなる気持ちは理解できる。ただ、それはどうみても真実ではない。
世の中に悪いアイデアはたくさん存在する。そしてその多くは、遅かれ早かれ、あなたの目の前に現れる。本当に良いアイデアは稀であり、部下が持ってくるアイデアの大半は無益な悪いアイデアであるか、単に馬鹿げているかのどちらかである。マネジャーであれば、そんな不愉快な場面に直面することも多いだろう。

イノベーションについて話すとき、「すべてのアイデアは良いアイデアだ」と言えば、あなたの信用は低下するだろう。部下の大半は、すべてのアイデアが真剣に受け取られてはいないことを知っているし、あなたが「いや、そんなことはない」と言ってみたところで、多少経験のある部下は、あなたのことを考えが甘いか偽善的かのどちらかだと考えるだけだろう。

また、それは実際的な問題も引き起こす。
誰かが本当に悪いアイデアを持ってきたとき、あなたは正直な意見を言えなくなり、正直に言ったら二枚舌の謗りを免れなくなる。そうなると、もう部下たちはどんなアイデアも(良かろうが悪かろうが)持ってこなくなる。そんな「ごっこ遊び」は止めて、すべてのアイデアが追求に値するわけではないという事実を率直に認めることが重要だ。社員はこの事実をすでに知っており、それを認めればあなたはそれだけ尊敬されるだろう。

もちろん、どのアイデアが追求に値するかを判断することは、それ自体が難しい芸当である。ほとんどのマネージャーは、おそらく「自分は新しいアイデアをそれなりに適切に判断できる人間だ」と自負しているだろう。しかし、真に独創的なアイデアは、その本質上、一見したところでは常識に反するものである。そうでなかったら、すでに誰かほかの人が追求しているはずだ。

しかも、調査研究によれば、私たちは昇進の階段を上っていくにつれて、他人のものの見方に対する受容力が低下し、私的な思考回路、価値観への確信を強めていく傾向がある。 その結果は憂慮すべきものだ。すなわち、マネージャーという地位にある人間は、良いアイデアを目にしてもそれと判断できない可能性が高くなる。それどころか、それを悪いアイデアだと判断してしまう公算が大きいのである。従来の発想を覆す新しいアイデアに対して、あなたの心を開き、会社の姿勢も改めようと思うなら、あなた自身のいつもの行動パターンから離れ(それが別の状況では価値ある行動姿勢であるにしても)、アイデアがあなたに提示された瞬間に判断を下すことを止める必要がある。その代わりに、そのアイデアを文字に書き残して1~2日寝かせておき、その後で評価するのだ。

通説3 ― 「イノベーションとは起業家精神である」

多くの組織で社員の昇進は、リーダーシップ、コミュニケーション、計画遂行のスキルといったコンピテンシーが有るか無いかで判断している。
そのような中で、イノベーションは、一般に起業家能力のサブセットとして表現されているのが普通である。簡単に言うと、企業はイノベーションのスキルを起業家能力の実証と同一視する傾向があり、それゆえマネジャーは、イノベーションの追求を最も進取の気性に富んだ社員に割り当てることが多い。

たしかに大ざっぱに考えれば、それは理に適っているように見えるかもしれない。しかし、大きな成功を収めた多くのイノベーターは、起業家的な精神も、商業的なセンスもまったく持ち合わせていない。 Appleの創業者チーム、JobsとWozniakのことを考えてみればよい。Jobsは商魂たくましい起業家であり、Wozniakは生粋の「技術屋」、発明家、そしてイノベーターであった。イノベーションを生み出す人々は、ひたすら問題解決に没頭して、商売気とは無縁である。機械いじりを始めるときには、商業的な見方などまったく念頭にないのが普通である。だからアイデアが欲しいなら、起業家のところに行ってはいけない。部屋の隅で何かを熱心にいじくり回している「オタク」のところに行くべきだ。


通説4 ― 「クリエイティビティ(創造性)はすべてに優先する」

最後にイノベーションをめぐる最大の通説は、「イノベーションは何よりもまず追求する必要がある」というものだ。
イノベーションの追求には、明らかにコストがかかる。イノベーションが本当に役立つためには、ワードやパワーポイントのスライドの中で表現されるだけでなく、各人の行動や組織のシステムに反映されなければならない。イノベーションは、時間、資金、注目や配慮など、多大なリソースを必要とする。しかも、そのようなリソースすべては、他の目的に、それもひょっとすると、彼らに有効な目的のために使用できたかもしれないものだ。イノベーションが無から生じることは決してないのだ。

従ってイノベーションを追求する意義は、会社のその他すべての優先課題との間で、慎重に比較検討されなければならない。 そのような検討の際には、いかにイノベーションの価値が誇大に宣伝されようとも、最適なイノベーション戦略は「まったくイノベーションを行わないこと」かもしれない、という視点を決して忘れないことが肝要である。


NPaddy Millerは、バルセロナのIESEビジネス・スクールで「組織における人事管理」を担当する教授である。
Thomas Wedell-Wedellsborgは、ロンドンを本拠として活動するコンサルタントで、企業の創造性とイノベーションを専門としている。この記事は、この2人の著者による近日出版予定の書籍に基づいている。詳細については、www.miller-wedell.comをご覧ください。この記事は、IESEの研究員、Azra Brankovicの協力を得て執筆されました。組織の中で創造性とイノベーションを奨励する方法については、AMAのセミナー、"Creativity and Innovation: Unleash Your Potential for Greater Success"(逆発想の成功術)をお勧めします。

※M World は、米国AMAが四半期毎に発行する機関誌です。
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