不況後の顧客へのサービス

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By Thomas Koulopoulos ----AMA抄訳

「それは最良の時代であるとともに最悪の時代であり...、希望の春であり、絶望の冬でもあった」

この言葉は、150年前に書かれたチャールズ・ディケンズの古典文学、『二都物語』の冒頭である。ディケンズが、18世紀後半を2つの時代の間の架け橋、つまり、農業の時代から工業の時代への移行期として描こうとした試みであった。この移行期には、いくつかの大規模な革命や独立戦争による社会の大変動が生じ、また偉大な発明と発見の時代でもあった。もしディケンズが現代に生きていれば、2010年を描くために似たような言葉を使ったかもしれない。今は、テクノロジーの時代と顧客の時代の間の移行期であるからだ。
新たな革命前夜という誇大な表現を受け入れるかどうかはともかくとして、最近の不況の中から出現した顧客がそれ以前の顧客と根本的に異なっていることは疑いない。金銭的に直接の影響を被っていない顧客でさえ、不確実性や不安、家族や友人への悪影響によって心理的に衝撃を受けた。不況後の顧客について認識を深め、その知識に基づいて行動することで、今は十分に対応できていない顧客を支持者へと変えることが可能となる。

不況後の顧客は選り好みが激しい

選り好みすることを顧客に教育してきたのは、企業の方である。今の顧客は、多数の選択肢を与えられており、多数のチャネルを利用して欲しいものを入手できる。苦労して稼いだ、しかも乏しくなる一方の資金で、値打ちのあるものを手に入れることを期待する。インターネットで知恵を付けた顧客たちは、十分な値打ちのないものを一切受け入れない力と勇気を身に付けた。加えて、優れたサービスまで経験してしまった。ディズニーのキャストメンバーは誰もが親切だし、FedExのカスタマーケア・センターに電話をすれば1回の呼び出し音で応答するし、Southwest Airlinesの客室乗務員は冗談で笑わせてくれる。その結果、顧客は面倒なことを嫌がり、待たされることに我慢できず、最初の接触ですぐに自分の要求に応えられない接客担当者への寛大さを一切持ち合わせなくなった。そうした顧客に対して、面白からぬ思いをさせる官僚的な対応を示したら最後、競合他社に逃げられてしまうことは必至である。


では実際のところ、そうした選り好みの激しい顧客は何を求めているのだろうか? Convergysによる2010年のリサーチ(Scorecard Series Research)によると、「企業から何を期待するか」という質問に対して、調査対象となった2,500人超の顧客の29%が「製品の品質」と回答し、28%が「顧客サービスの質」を選んだ。「価格」を最優先項目とした顧客は、2009年の24%から2010年の19%に低下した。長年にわたる品質向上の取り組みによって製品の品質は当然が前提のようになったが、サービスの質は依然として顧客の期待に追い付いていない。要するに、質の高い製品を適正な価格で提供すれば顧客を取り込むことはできるが、その顧客を定着させ、その会社や製品の支持者へと変貌させるのは、顧客が経験するサービスの質なのである。

不況後の顧客は移り気である

顧客は一人ひとりが違う存在である。誰もが、自分に合ったサービスを自分の好きなチャネルを通じて受けたいと思っている。USAAは、現役軍人および退役軍人とその家族という特殊な市場分野を対象とする非常に評価の高い金融サービス会社である。USAAは、先頃、顧客(会員)がいつでもどこからでも小切手を預け入れできるようにするiPhoneアプリケーションを導入した。USAAの顧客は、小切手に裏書し、両面の写真をiPhoneで撮影し、それをUSAAに送信すると、即時に口座振り込みを受けられる。米国の電子マーケットプレイス(インターネット取引市場)であるeBayは、2009年の後半に、顧客が携帯電話を使用してどこからでも売買できるようにする新しいiPhoneアプリを導入した。最初の1ヶ月の間に、誰かがアンティークのコルベットを75,000ドルで買ったが、それはどうやら奥さんがウォールマートから出てくるのを駐車場で待っている間だったらしい。このアプリのダウンロードは最初の2ヶ月で500万回に達し、実に5億ドルを超えるオークション取引を生み出したのである。

顧客が望んでいるのは、何かキラリと光る、印象的なものだ。何事にも特別な「オマケ」を欲しがっているのだ。目新しい特長の方が機能自体よりも顧客の興味をそそるようになり、付加機能の方がコア機能よりも重視される。つまり、不況後の顧客を引き付けるためには、サービスを呼び物であると見なす必要があるのだ。顧客が経験するサービスをさらに別の企業の事例を通じて見てみよう。Netflix(米国のオンラインDVDレンタル会社)は、Blockbuster(レンタル・ビデオ会社)の後追いはしなかった。Netflixが範を求めたのはAmazon.comだった。そして、Netflixの急成長の陰で、Blockbusterは同じくらい急速に凋落していった。Bass Pro Shops(米国のアウトドア用品チェーン店)は、Bubba's BaitやMarinaを模範とは見なさなかった。Bass Pro Shopsが手本としたのは、ディズニーワールドだった。顧客が経験するサービスをCracker Jack(米国のスナック菓子ブランド)の箱だと考えてみた場合、あなたの会社にとって「オマケ」("free prize inside")戦略とはどのようなものになるだろうか?

不況後の顧客は要求が声高である
インターネットの普及によって、顧客は自分の意見を声高に主張する姿勢を強めてきた。ソーシャル・メディアは、コミュニケーションの様相を一変させようとしている。ソーシャル・メディアによって、従来の「口コミ」の影響力は5倍にも増している。Convergysのリサーチによると、嫌な経験の報告をソーシャル・メディアで読んだ顧客の62%が、その原因となった会社との取引を止めたり、その後の取引を避けたりしている。この「風評」現象は、今後、ソーシャル・メディアの利用が増大し、消費者の主体が、電子機器に不慣れな「デジタル移民」世代から、年少期から電子機器に馴染んでいた「デジタル原住民」世代へと移っていくにつれて、さらに拡大するだろう。
賢明な企業は、多数の通信手段とチャネルを提供して、顧客がフィードバックと提案を容易に送れるように便宜を図っている。「優れたイノベーションの大半は顧客からやってくる。サンノゼの象牙の塔の中であれこれ考える時間が増えるほど、業績は悪くなっていく」と、eBayのCEO、John Donahueは語っている。顧客はパートナーという扱いを受けたがっているのだ。BusinessWeek.comは、Unilever(スキンケア、パーソナルケア、食品などの開発・販売企業)がどのようにして消費者を集めて、そのグループにTwistと呼ばれる新しい健康・美容製品を開発させたかを報じている。

不況期は顧客が経験する価値(エクスペリエンス)を高めるために注力する、と考えている人もいるだろう。しかし、顧客側の言い分によれば、ほとんどの企業は「顧客の声」に耳を貸してきていない。Convergysのリサーチによると、調査対象となった顧客の4分の3以上が、過去1年間に提供された顧客サービスの質は従来と同等であるか、むしろ悪くなっていると回答しているのだ。

では、企業の側で、社員や経営幹部たちはどう考えているのだろうか? Convergysが調査した1500人超の社員と120人超の経営幹部の50%は、自社のサービスは向上したと考えているのである。実際、そうなのだろう。ただ、顧客の期待の上昇速度の方が大きかったのだ。

私の母親、Avis Bellこそは不況の申し子だった。前世紀最悪の不況を生き延びたこの女性の生涯には、特別なクリスマスの楽しい思い出がちりばめられている。それは、プレゼントを買うお金がなかった時代の話だ。だから、市販商品の代わりに、手作りの思いがけないプレゼントを用意する必要があったのだ。そうした制約によって、贈り手は相手の個性に思いを馳せるように促されたのだ。だからこそ、プレゼントを受け取った人も、「気の利いた買い物」の価値以上に「心がこもった労力」のありがたみを感じることができたのである。

一時解雇、人員・生産・経費の削減など、あらゆるものを減らす「引き算」の時代から出現してきた顧客は、買い物には選り好みが激しく、ブランドへの親近性では移り気であり、自分の要求を伝えることでは声高であり、個人に合わせた対応を期待するという点で偏狭である。この新しい顧客の時代にあって、私たちも、かの大不況を生き延びた人々と同様に、他人に奉仕するとはどのようなことであるべきかという問題の核心に立ち戻る時なのだ。
想像力、本当の価値、そして手作り、という核心に。

※Chip R. Bellは、顧客ロイヤルティ獲得の分野におけるコンサルタントであり、ベストセラー『Take Their Breath Away: How Imaginative Service Creates Devoted Customers』の著者である(John Pattersonとの共著)。詳細はwww.chipbell.comを参照。
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