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By Ken Blanchard ----AMA抄訳
明日のリーダーが直面する主要課題 ~部下に成長の機会を与えよ~
2011年は景気の回復が継続する見通しだが、世間が求めている雇用水準への直接的な改善効果は期待できないだろう。
過去2年間の景気の落ち込みによって、多くの企業が人員削減を強いられ、現在も雇用の再開には非常に消極的である。しばらくは、たとえ求人があるとしても、大規模なFortune 500企業からは出てこない可能性が非常に高いだろう。むしろ、小規模な起業家タイプの組織から就業機会がもたらされるか、あるいは比較的大規模な組織から生じるとしても、新しい技術分野や環境関係の求人になる可能性が非常に高い。
リーダー、特に人材開発(HRD)分野のリーダーにとっては、そうした新しい仕事に対するニーズを満たす方法で従業員に成長と能力開発の機会を提供することが、これからの大きな課題となるだろう。リーダーシップに関する考え方の多くは、依然としてブルーカラーの発想に根差している。かつては何か1つのスキルを習得すればその仕事で一生暮らしていける、という想定が成立した。しかし今では、誰もが職業人生全体を通じて新しいスキルを絶えず学び続けていく必要があり、ひょっとすると、長い年月の間には何回か転職することさえ必要になるのが新たな現実だ。
今後は、ブルーカラーの世界に代わって、労働がテクノロジーや知識に主導される傾向が強まっていくだろう。当然ながらそのような仕事では、従業者が最新の技術やベストプラクティスから遅れを取らないように継続的なトレーニングが必要となる。
テクノロジーの役割
リーダーは、従業員に各自のスキルを伸ばす機会をどのように提供するかを、いつも気にかけておくことが必要となる。ある仕事や職務が新しいテクノロジーに取って代わられる事態に備えることが、これからの課題となるだろう。
そのためには従業員個人の教育訓練を軸として、労働力のあり方を大きく方向転換する必要が生じてくる。今後従業員は、業績目標のほかに、最新の業界水準を維持し続けるための能力開発目標も設定することが必要となるだろう。人材開発(HRD)の専門家がその任務に対して大きな責任を担うのは当然だが、従業員自身にとっても、学習すべき新しい分野で自分自身の能力を高める責任がその職務の一部となるだろう。つまり、「学び続けない者は脱落する」ということだ。
マネージャー(管理職)には3つの責任がある。
第1は、自分自身の仕事を遂行することである。
第2は、部下の職業能力育成を支援することである。
第3は、長期的なキャリア開発プランを部下に提供することである。
マネージャーがさまざまな重圧と制約の下に置かれていることを考えると、これまでマネージャーがとりあえず自分自身の仕事を成し遂げることに注力し、他の2つの責務はもっと適当な時期が来るまで後回しにしてきたとしても、仕方がないかもしれない。だが、もう始めなければならない。景気が力強さを取り戻しつつある今後1年間こそ、その好機なのである。
マネージャーは、もうこれ以上、短期的な能力開発と長期的なキャリア開発について、部下との対話に着手するのを先延ばしにすべきではない。現在の役割における部下の能力を刷新するだけでなく、将来本人がどのような方向に進もうと考えているのか、質問を投げかけてみる必要がある。
このような責務に取り組まないリーダーは、最も優れた部下を失う危険がある。就業機会が拡大し始めるにつれて、社員たちは、本当にスキル育成とキャリア開発に配慮してくれる組織はどこなのかを問い直そうとしている。競争環境に置かれた組織として、そうした責務を軽視したために最も優れた部下を潜在的な競合企業に引き抜かれることなど、許されるわけがない。
もう時間は残されていない
リーダーは、変わりやすいビジネス環境を完全に掌握するための努力をなおざりにしてはならない。組織が必要としているのは、ビジネス環境を絶えず注視し、「誰がうちの会社をつぶす可能性があるか」と問い続ける人間である。熾烈な競争が支配し、すべてがつながっている現代のビジネスの世界では、何事も当然視することはできない。突如、ガレージから身を起こした起業家が新しい製品とサービスを引っ提げて登場し、あなたの会社を廃業に追い込むかもしれないのだ。ここまで来ればもう大丈夫と思ったときが、最も危ない瞬間である。自己満足してはならない。自社が顧客に何を提供しているかに常に気を配りながら、ほかの誰かに上を行かれる可能性を絶えず警戒し続ける必要があるのだ。
今こそこれまで以上に、マネージャーは組織内の全員に、特に組織内で最も優れた人材に、献身的かつ積極的に各自の最高レベルで働いてもらう必要があるのだ。過去2年間の高い失業率によって、多くのマネージャーが、従業員のニーズは後回しでよいという誤った考えに陥っている。
HRD部門の担当者にとっては、構造改革プロセスとしてのリーダーシップ育成に目を向けることが重要である。
まず、個人の意識改革から始めよう。前途に待ち受ける課題に対してリーダーに準備を促すプログラムを考案するときは、リーダーの自己認識を高めることを出発点にすべきである。向上心の高いリーダーにリーダーシップに関する各自の観点を明らかにしてもらい、それをリーダー同士で共有させるのだ。
次に自己認識に基づいて、対人的な一対一のリーダーシップを強化するモジュールによって、既存のエグゼクティブ育成プログラムを拡充する。このモジュールで、リーダーは信頼を構築し、チームを指導し、共同体を生み出すことを学ぶ。最後に、それを組織のリーダーシップへと拡大させ、そこで組織の実力を育成していく取り組みを徐々に進めていく。
リーダーに求められる3つのスキル
数年前、私の同僚のBob Katzが、リーダーが必要とする3種類のスキルについて話してくれた。すなわち、
(1) 自分自身の仕事を遂行するのに役立つ技術的スキル
(2) 部下とともに働くための人間関係スキル
そして、
(3) 明確なビジョンを通じて部下に未来への意欲を持たせることに役立つ構想のスキル
である。
これまでの通念では、業務を監督するマネージャーは主として技術的なスキルを必要とし、中間管理職は人間関係スキルをより多く必要とし、トップレベルのマネージャーだけが構想のスキルを必要とする、と考えられていた。しかし現在では、あらゆるレベルのマネージャーがこの3つのスキルを伸ばすことを検討する必要がある、と私は考える。
もっと多くのリーダーが必要なのだ。今後は、人間関係スキルを習得できる人が重視されるだろう。かつて、最高幹部レベルのリーダーは、就任を目指すべき最も重要なポストは最高財務責任者(CFO)であると考えていた。しかし将来は、人事担当のVP、つまり人事の問題に本格的に取り組める人こそが目標とされるようになると私は思う。
将来のMBAプログラムは、まずリーダーシップの学習から始めることが望ましい。過去にMBAプログラムが実施してきたことは財務管理とコンサルティングが中心であり、もちろんそうした分野を学ぶのも結構ではあるが、その分野を卒業した人材はもう間に合っているからだ。
顧客を大事にする従業員を大切にしよう
今こそリーダーは、従業員を定着させること、そして顧客を維持することに再注力すべきだ。そうしないな
ら、競合企業が間髪を入れずに飛び付いてくるだろう。ひょっとすると、最も優れた部下はすでにヘッドハンターの接触を受けているかもしれない。もしまだロイヤリティの構築が進んでいないなら、不意打ちに遭う覚悟もすべきだろう。
誰かが自分のことを気にかけてくれている、という気持ちは、従業員の積極性、つまり私たちの呼ぶところの「従業員の仕事への情熱」("Employee Work Passion")を高める主要ファクターの1つである。
組織が本当に従業員を大切にする姿勢を示し、能力育成に投資し、キャリア開発を支援していれば、従業員も同じ方法でその恩返しをしたいと考えるようになるだろう。
※Ken Blanchardは、日常的な人事管理と企業経営のあり方に非常に大きな影響を与えてきた。
著名な人気著述家、講演者、そしてビジネス・コンサルタントであるBlanchardは、友人、同僚、顧客から、今日のビジネスの世界で最も洞察力に優れた、有能で人情味のある人物の1人であると評されている。Blanchardは、全世界で最も影響力の強いリーダーシップのエキスパートの1人であり、リーダーシップとマネジメントの分野における長年の画期的な業績によって尊敬を集めている。
※M World は、米国AMAが四半期毎に発行する機関誌です。
※M World の記事内容・コンセプトは、必ずしもAMAが提供する研修プログラムの内容とは一致しません。