-AMA外国人講師からの視点- 日本人がグローバルビジネスで活躍するために必要な能力とは?

ロルフ・グルーン(Rolf Grun) AMA講師
2004年以来、米国AMAおよび日本で講師として活躍。
戦略立案、イノベーション、リーダーシップ、問題解決及びマーケティングを含むマネジメント層向けの研修や、新任管理職研修を専門としている。日系企業ではグローバルに事業展開する電機メーカー、商社、化学品メーカー、金融サービス企業、製薬企業などで、主に次世代グローバル人材育成に関わる多くのトレーニングを担当。ハーバードビジネススクールMBAを取得。

ここ数年、ニーズの高まりから、日本の日系、外資系企業の両方で、日本人と外国人が混ざった チームに対してグローバル人材育成プログラムの実施をする機会が増えました。 そんな中で、特に日本企業で働く日本人の皆さんがこれからグローバルリーダーとなるために、 私の立場からエールを送るとすれば、それは「発言しよう!」、そして「環境に慣れよう」の2点です。

考えていることを勇気を出して発言しよう

こんな笑い話を聞いたことがあります。

仕事で日本に来たアメリカ人が、日本のある都市から別の都市へ飛ぶ飛行機のチケットを取る ために、旅行代理店に行った時のことです。彼は、「A市からB市までのチケットがほしい」と言うと、代理店の担当者は、 「申し訳ありませんが、それはお勧めできません。代わりの案をご提案します」 と答えたと言います。 急いでいたアメリカ人は、「どんなにお金がかかっても構わない。何とかその便の一席を予約して ほしい」と再三にわたりお願いします。ところが日本人担当者の答えは同じです。 よくよく話を聞いてみれば、A市からB市に行く直行便はなかったのだそうです。 ただ、それを担当者は明確には言わない。

皆さんもご存じのとおり、日本は非常にindirect(間接的) な文化が特徴です。ハイコンテクスト文化とも言われます。これは日本の歴史や土地柄を象徴しているものです。私はこれが良いとか悪いとか言うつもりはもちろん、ありません。 ただ、世界がグローバル化し、国内だけでビジネスが完結しない今日、この文化的特徴は時にマイ ナス要因となる場合もあるのではないかと思うのです。

私は、日本人と外国人の両方が混ざったチームにトレーニングを実施するとき、もっとも苦労する点 は「いかに日本人参加者に発言させるか」ということです。 日本人は非常に仕事熱心で勤勉です。課題を出せば、こちらからストップをかけない限り、熱心に 取り組み続けます。 英語もできないわけではないと思います。ただ・・・それを発言しようとしないのはなぜなのでしょう?

日本にはグループを大事にする文化があります。「出る杭は打たれる」という言葉もあります。 また、幼い頃からの教育で、自分なりの考えをもち、それを積極的に発言せよ、そのようには教えられていません。こうした背景を知ると、クラスの中で発言が出ない理由も理解できないわけでは ありません。

それでも・・・それでもグローバル環境でビジネスをするためには、まず"勇気を出して"発言する ことが重要だと思います。

発言をするには、何らかの考えをもつ必要があります。

私が小さい頃から学校でされてきた教育は「learning how to think(考えることを学ぶ)」でした。 どうしてそのようになったと思うか、なぜそのように考えるかなど、先生にはしきりに「why?」と 聞かれて育ってきました。

一方日本の学校は、どちらかというと先生が黒板に書いて教えることを子供が覚えていく教育だと 聞きます。また、日本語という言語ひとつをとっても、莫大な数の漢字を皆さんは使いこなしてい ます。記憶力重視なのですね。

「Why?」と考える機会が少なかっただけ、単なる教育の違いです。

だからこそ、私のトレーニングでは、受講者にしつこいくらい「why?」と尋ねるようにしています。

グローバルビジネスに入ればネゴシエーションは付きものです。100%正しい答えをもっていない場合であっても、ある程度自分の立ち位置を決める必要があります。自分で考え、考えたことを勇気を出して発言する、この能力は非常に大切です。

居心地の悪い環境に"慣れる"

日本企業には非常に優秀な技術力や才能があります。

これらの能力をグローバル環境でさらに発揮するためには、その環境に慣れることも重要です。

グローバルな環境は、日本人にとって異質で最初は居心地の良いものではないかもしれま せん。自国の良さや強さを知り、世界にはたくさんの異なる考え方や慣習があることを知り、 そういった考え方を寛大に受け入れ、居心地の悪い環境に身を投じて、そこが快適だ! と思えるようになるまで慣れること、これがもうひとつ重要なことだと思います。

AMAのグローバル人材育成プログラムでは、アクションラーニングという形で異質な環境の 中で考え、意見を述べ、異文化の人々と共働するための練習を場を設けています。 たとえ限られた時間であっても、そうした環境に巻き込まれることによって個人が受ける刺激 は計り知れないものがあるものです。

そして、トレーニングという守られた場の中で能力を磨くことは、グローバル環境に慣れて いない日本人にはとても有効な"練習法"でもあると思います。 その時間の中で私は講師として、いかに参加者一人一人に発言をさせ、自分の能力を その場で早く発揮できるようにさせるか、いつもそのことに最大に努力を傾けるようにして います。

英語力が必要か?と聞かれれば、それはもちろん、必要な要素ではあるでしょう。 ただ、英語となると往々にして話すことに目的を置いてしまいがちです。そうではなく、 英語を話すことの先に何があるのか?グローバルなビジネス環境では、あなた自身の 考えを持ってそれを議論する必要があること、これを忘れてはいけないと思います。

グローバルに組織と人材が飛躍すること

今年初め、日本を代表するある企業のリコール問題が米国で話題になりました。 その時の報道で私が驚いたのは、現地法人社長の公聴会での言葉です。

「私は米国でセールスを任されているのであり、開発の責任は日本にあるからわからない」

こういった内容の発言を聞いた時、日本で最もグローバルであると考えていた企業が、 組織としてはまだ発展途上だったという事実に非常に驚きました。

1980年代半ば、私はビジネススクールで日本企業が世界に進出して成功したマネジ メントについて多くを学びました。その頃私の頭の中では、日本企業はすでにグローバル 化している、という見方を持っていました。

ところがこの一件から見ても、日本企業は輸出、という点ではグローバルだった にも関わらず、マインドセット(考え方)はまだグローバルになりきっていなかったのでしょう。 日本企業はマルチナショナル企業なのだと思います。   









私が認識するグローバル企業とは、組織としての決断をグローバルベースに行う企業のことです。 これから日本企業や日本人が本当の意味での"グローバル"に変わるためには、様々な課題が あるとは思いますが、まずはこの2点において大きく"mental leap(精神面での大きな飛躍)"を することが重要だと思います。                     


2011年1月取材